運命、そしてその予言は存在するのか?アガスティアの葉
アガスティア ナーディ ジョーディダム ニラヤム

服部 正(1996年記)

 私はここ数年インドに魅せられ、家族、友人、知人、などから白い目で見られつつも、何度もインドを訪れている。

 そもそも、インドを訪れることとなったきっかけは、サティアサイババという聖者がいる、という話を聞き、彼のアシュラムをたずねたのが最初だった。
サティアサイババのアシュラムには三年越しに三回おせわになつた。
サティアサイババは噂どおりに、私の目の前でビブーティを物質化したり、ダイヤモンドの指輪をとりだして人に与えたり病気を治したりする奇跡をおこなって見せてくれた。

 最近彼のことをいろいろ言う人がいるが,彼のパフォーマンスが本物であれ,マジックであれ,彼の元を訪れた人の多くはその人の行動や心のあり方に大きな変化が起こる。彼の行う最も大きな奇跡はそこを訪れた者の「心」が変わることである。彼自身はなにを語るでもなく、そこにいるだけである。

 それでも彼のアシュラムを訪れたものは,多かれ少なかれ心の成長を遂げる。インドという国は不思議な国である、ある種の人間を捕らえて離さない「何か」を持っている。

 インドを訪れるときよく言われる言葉がある
 「インドが呼ばないものは,誰もインドを訪れることはできない。」と。

 今回私が訪れたのは、国際空港がある南インドのチェンナイから車で約三時間半の距離にあるカンチイプラムという田舎町にある「アガスティアナーデイジョーデイダムニラヤム」と呼ばれる館である。(長い名前なので以後アガスティアと略す)

 青山正秀氏の著書「アガスティアの葉」で一躍有名になったのであるが、そのあまりに信じがたい内容のためほとんどの人からはフィクションだと思われているようである。

 私も、自らがこの場所を訪れる機会があるなどとは夢にも思っていなかった。
私はもともと占い,予言,占星術,おみくじ,・・・などの類のものが大嫌いなのである。道端での易者の占いをしてもらったことは生まれて一度もないし、ここ十数年寺,神社などのおみくじを引いたこともない。週刊誌,新聞の占いコーナーなど読んだことすらない。それでは、なぜわざわざインドの僻地に行く羽目になったのか。

 実は,インドのある聖者(サティアサイババではない)の所へいく予定をしていたのだが、そのル〜トが先方の都合でキャンセルされてしまったのである。
 それならそのまま中止にすればよかったのであるが,私の診療所は、私のいない間は全て休診となる。スタッフの女の子たちはこの休みを利用してアメリカツアーを既に企画してしまっていたのである。
 彼女たちのツアーを中止させ,非難の目で見られながら仕事をする勇気が私にはなかった。
 このとき、突然頭に浮かんできたのが「アガスティアの葉」のことである。
この時点で予定の日時まで1ヶ月程度しかなかったのであるが、熊本在住の友人の福島氏に頼み(日本人ではおそらくこの時点では、アガスティアに1番詳しい)アガスティアへのルートを確保してもらった。

 現在、アガスティアの葉の予言リーディングを行ってくれる所は、南インドだけでも十数ヶ所が存在する。またアガスティア以外の予言書(ブリグ・ヴァシスタ等がある)を含めれば、葉っぱを読んだり、個人予言解読をする事を商売としている所は四十ヶ所以上あるという。

 もちろんインチキ臭いものも多いようである。(尤も、インドのこの手の商売はほとんどインチキ臭いのであるが)それでも、福島氏によれば私が今回訪ねたカンチープラムのアガスティアの館が、現在1番内容的に信用がおけるようである。

 アガスティアの葉は、ナディリーダーと言われる家系に引き継がれるのであるが、その過程で紛失したり、適当に改ざんされたりする様である。また、自己流の占星術で行っている所や、まったくインチキまで各種あるという事である。

 話が前後してしまったが、「アガスティアの葉」をご存じない方のために、簡単にアガスティアの葉の事を説明しておく。

 現在から約四千年〜五千年前、インドにアガスティアという名の聖者が存在し、四千年〜五千年の未来、即ち現代に生きているある種の人々に関する莫大な量の予言書を書き残したと言われている。
 そして、それを代々引き継ぎ伝えているのがナディリーダーと言われる特殊な家系である。四千年〜五千年前に聖者アガスティアが最初に書いたのは鹿の皮の上で、古代タミール語によってであるが、それが約二千年前にヤシの葉に書き写され、現在使われている葉は約三百年前に書き写されたものとされている。

 聖者アガスティアは、誰がいつ予言の葉を読みに来るかを予知し、予言を読みに来る人の分だけ予言を用意してあるという。
 ただ現実には、アガスティアの葉を探しに来た人の自分の葉の見つかる確率は七〇%〜八〇%であるという。


 マドラスから車で役三十分位の所にタンブラムという町がある。
ここのホテルに宿をとり、車で約二時間の距離のカンチープラムにあるアガスティアの館に着いたのは朝の十時であった。既にインド人が数人外で待っていた。

 アガスティアの館の入口からすぐ中に入った所の待合室にと通される。殺風景な六畳ぐらいの部屋で床は板ばりである。天井にはもうすぐ壊れそうな大きな扇風機がある。回ってはいない。

 しばらくすると、ナディリーダーの助手らしき男が来て、指紋の登録を行う。男性は右手の親指の指紋を登録する。
 名前は言わず、変わりにNo,1と書いておく。
日本人であるのは分かっているので、相手に与える情報は、「日本人」「男」「右手の親指の指紋」だけである。(女性は左手の親指の指紋で行う)ここまでは非常に順調であったのだが、このあたりからはさすがにインド、いくら待ってもナディリーダーは現れない。
 バンドル(ヤシの葉の束)を探していると言う話である。
途中でチャーイというインド風ミルクティーを出される。
(おもいっきり濃く抽出した紅茶、熱いミルク、そして大量の砂糖が入っている。インド中どこでも屋台・露天、自転車など色々なスタイルで売っている。不思議とどこで飲んでもとても美味しい。火がよく通っているので、水の悪いインドでも安心して飲める。)

 これでもう1時間位は待つのに堪えられるかな・・・と思っていると、準備が出来たのか別の部屋へ呼ばれる。
 この館には、葉っぱの内容を解読するナディリーダーと呼ばれる人が五〜六人いる。その他、その下に助手的な仕事をする者がそれ以上いるようである。
 ナディリーダーとなる為にはかなり幼い頃から修業や勉強をするそうである。
 少なくとも古代タミール語を読めなければ話にならない。

 もう1つ、目がよくなければならない。
ヤシの葉に書かれた文字はあまりにも小さく、私ごときには読めない。
現役のナディリーダーとして働く期間はかなり短いそうである。
ただ、通常のインド人に比べるとはるかに高収入だという事である。

 ナディリーダーにも階級があり、ここではベテランは専用の部屋を持っているが、下っ端のリーダーは部屋はなく、我々の待っている部屋の隅でインド人の客のリーディングを行っていた。

 いよいよ私の葉のセレクションが始まる。ナディリーダーは、まずバンドルの束を両手に持ち、祈りを捧げる。この葉は彼らにとって経典と同じ非常に神聖な物なのである。
 彼らは特殊技能者であると共に聖職者なのである。

 ヤシの葉の保管倉庫にはナディリーダー以外は誰も入る事は許されないそうである。ナディリーダーは葉に書いてある古代タミール語を読み、通常これを通訳のインド人が現代タミール語、さらに英語に訳し、またさらに別の通訳が日本語に訳すという形をとる場合が多い。(この地域の日常会話は現代タミール語である)

 ただ、今回私のリーディングの担当となってくれたセルバムは英語が得意なので古代タミール語を直接英語に訳してくれる。それを通訳のシャルマが日本語に訳す。私も英語は多少分かるのだが、このあたりの英語は発音がかなり癖がありヒアリングが十分出来ないのである。

セルバムからの質問が始まる

あなたは結婚をしている イエス
あなたは政治の仕事をしている ノー
両親は二人とも生きている  ノー
男の子供がいる イエス

    
 これらの質問をイエス・ノーで延々と続けるのである。
一束には五十枚位の葉があり一つの葉には何十問かの質問がある。

 リーダーはお経のごとくかなり早いスピードで葉を読み、質問を私に浴びせる。内容の事は特に考えている様子はなく、どんどんヤシの葉の束をめくっていく。
一束目にはイエスとノーが入り交じり私の葉はなかった。
二束目も徒労に終わり、セルバムは倉庫から別のバンドルを持って帰ってくる。
今度のヤシの葉は今までの物よりやけに小さく汚れている様な気がする。
この三束目の中程を過ぎた頃の質問である。

長男である イエス
瞑想をする イエス
兄弟が一人いる イエス
子供は男の子と女の子の一人づつである イエス
(中程 略)
星座は乙女座 イエス
母の名前は ヨシコ イエス
妻の名前は ヒロコ イエス
父の名前は センパチ イエス
本人の生まれは一九五一年十月二日 火 イエス
本人の名前は  タダシ イエス


        
 質問の中にはイエス・ノーのどちらとも答えにくい内容もある。
リーダーは答えに迷っているとその葉は違うと言って次に移ってしまう。
葉の中に一つでもノーがあればそれは違うと言うのである。

 確かに自分の葉が出て来る時は突然答えがイエスばかりになっている。
そして父親・母親・妻・私の名前を発音しにくそうにセルバムは言う。

 「なにか質問はありますか?」
 「今の所だけもう一度読んで下さい。」
 「OK」内容は同じであった。当然ではあるが。
 「満足ですか?」
 「・・・・・・・・イエス。」

 この出てきた葉を基にセルバムはさらに詳細な内容を書いたヤシの葉を倉庫から探すのである。この作業は比較的楽なようである。ただ、一日目の作業はこれで終わりである。

 通常よりかなりスムーズに行われたという事であるが既に朝からは三〜四時間は経過している。私の後には次の者が待っているのである。尤も彼らは人が待っている事など気にする様な人達ではない。

 翌日、タンブラムのホテルヘンカラで七時に朝食をとり、再び車で二時間かけてカンチープラムへやって来る。昨日と同じに十時に到着した。
しかし予想どおりセルバムが現れたのは十二時頃であった。

 そして作業開始に三十分。チャーイを飲むのに三十分。途中疲れると部屋を出て行き、どこかへ行って休んでくる。その間我々は待っているのである。

 ただ、セルバムはまだナディリーダーとしてはましな方で、ここで一番古いシュリンバというナディリーダーは途中で部屋を抜け出し、客をまたせたまま三時間程戻らなかった。昼寝をしていた様である。待つのはインドでは普通の事なのである。

 アガスティアの葉の本編は、十二の一般カンダムと、四つの特別カンダム、合わせて十六のカンダムに分かれている。

 十二カンダムは十二宮に対応しているという。(カンダム:項目、章)

第1カンダム 本人の名前・指紋のタイプ・星の位置
今後起こりそうな事一般・第2〜第15カンダムのほとんどを網羅した大まかな事が書いてある。ジェネラルカンダムと呼ばれる。
第2カンダム 金銭・家族・教育・スピーチ・眠に関する章
第3カンダム 兄弟・姉妹に関しての章
第4カンダム 母親・家・人生の喜びなどに関する章
第5カンダム 子供に関しての章
第6カンダム 病気・借金・敵などに関する章
第7カンダム  結婚・配偶者に関する章
第8カンダム 寿命・人生における事故や危険などに関する章
第9カンダム 富・寺院への訪問・幸運・聖者の教え・慈善行為などに関する章
第10カンダム 職業・仕事・転居などに関する章
第11カンダム 利益・再婚に関する章
第12カンダム 出費・外国訪問・来世・解脱などに関する章
第13特別カンダム (シャンティ・カンダム)前世・前世のカルマ解消法などに関する章 
第14特別カンダム (ディクシャ・カンダム)
マントラを唱えたリ護符を着用してカルマを解消する方法に関する章
第15特別カンダム (アウシャダ・カンダム)
慢性病の治療薬と処方などに関する章
第16特別カンダム (ダサブクティ・カンダム)
進行中の惑星周期の予言に関する章


 私は第1〜第15までをセルバムに読んでもらった。
第16は読んでもどうせ分からないという事であるので読まない事とした。
 ほとんど読む人はいないそうである。費用は第1カンダムが一千ルピー、他は1カンダム五百ルピーである。ちなみにインド人はこの1/10〜1/20の費用だそうである。他のアガスティアの館ではもっと高い所の方が多いそうである。

 以下は私の第1カンダム(ジェネルカンダム)の内容の一部である。

 「聖人アガスティアは本人タダシの将来を予言する。
ここでは右手の指紋を基に識別を行う。指紋の種類はキルトゥレイガーである。
1951年10月2日火曜日生まれである。星座は乙女座、アストロロジーは別記の通りである。(これはセルバムが別の紙に書いてくれた。)
 この占星術に基づいて予言を行う。チャンドラーは乙女座、アセダントも乙女座である。本人は長男である。本人の父親は亡くなっている。母親は生存している。

 父親は二回結婚している。本人は二回目の結婚後の息子である。
母親は自分の財産がある。母親は膝に問題がある。本人は男の兄弟が一人いる。女の兄弟はいない。兄弟は結婚している。本人とは離れて住んでいる。・・・(途中略)

 本人は高等教育を終了している。これは技術系の勉強である。
本人は結婚して奥さんと楽しい人生を送っている。奥さんは将来的に仕事でも家庭でも、あなたのよい援助者となる。本人は一人の男の子供と一人の女の子供がいる。子供達は現在勉強中である。・・・(途中略)

 このリーディングを行った当人の名前はタダシ。父親の名前はセンパチ。
母親の名前はヨシコ。妻の名前はヒロコである。
 当人は現在四十六歳、自分で仕事を行っている。これはプラスチックコネクションである。(?)器械を使う仕事である。器械を使って何かを作製してそれを売る。そしてスピーチをする事も収入に関係がある。・・・(途中略)

四十七歳の時仕事上の・・・が良くなる。
四十八歳の時・・・の為、外国を訪ねる。
四十九歳の時・・・の収入が入ってくる。
 これ以上は、ずっと具体的な内容が述べられている。それによれば五十歳〜五十五歳位では私は本業の仕事が発展し、現在行っている見えない世界の勉強の方面でも進歩発展し、それによる収入も入るようである。

 そして、このカンダムではない第8カンダムには以下の如く記されている。( )歳( )月の火曜日チャンドラーは天秤座、時間は夜、本人は( )で亡くなる。自然死である。
*( )内はもちろん具体的な数字、場所が記されていた。

 最初に述べたが、私は占いや予言などの類は本当は嫌いである。結果よりも経過・その間の努力・精進こそ大事であり、その後の結果はそれほど重大ではないと考えている。アガスティアの葉に書かれていた内容は大学ノート一冊分にも及ぶが、その殆どは私の現状と一致していた。

 そして前記した内容はセルバムが読んでくれたそのままであるのだが、全ての内容は現在までの所正確そのものなのである。そして、未来に関しては自分なりに考えている予想とかなりオーバーラップする。

 インド人が、タダシ、ヒロコ、ヨシコ、センパチの名前を思いつくはずは無い。
仮に彼らが何処かで多くの時間を費やし内容を調べてきたとしても、私が母と別れて住んでいる事、母の膝の事などがどうして分かるのだろう。(彼らは決して事前にそんな面倒な事をする様な人達ではない。)他のカンダムには私のアトピー性皮膚炎の事とその治し方まで書いてあった。しかしこの治し方は、アーユルベーダーの薬を用い、滝に打たれる類のもので行っていない。

 以上は事実をなるべく客観的な書いたつもりであるが、本当の内容は膨大であり、むしろアガスティアの葉の周辺の事情、見えない部分にある意味などを説明したいのだが、今回はこの程度に留める。
読者がこの事実をどう受け止めるかは読者の自由である。

1996年記     Tadashi Hattori

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